クラウドサーカス株式会社が提供するチャットボット「IZANAI」、WebAR作成ツール「LESSAR」を導入されているお客様の事例をご紹介します。
今回は高知県室戸市役所の 有光 様に取材をさせていただきました。
目次
高知県室戸市 様
四国四県の下方に位置する高知県の中でも、最右端に位置するのが室戸市です。室戸市全体の土地は、世界的にも珍しいことから、ユネスコジオパークに認定されています。そのため線路を作れないなどのルールがある一方で、自然の魅力がたくさんつまった場所となっています。
室戸市は語りきれないくらいの魅力がギュッとつまった宝箱のような場所で、豊かな食文化をもつ高知県の中でも、室戸の「食」は格別です。室戸市は陸地が高く、海に入ると急激に深くなる「海成段丘」という特徴的な台地の成り立ちのため、船で遠くに出なくても陸地に近い場所でおいしい魚がとれます。サバ、ブリ、カツオなどとれる魚はどれも鮮度抜群で食べられるため美味しく、とくに市内で食べられるキンメ丼は絶品です。
たとえば今はサバの旬で、室戸廃校水族館の企画「サバらしい日々」では、室戸市内の飲食店で1,000円の鯖ランチが食べられるイベントなども実施されています。
浦:有光様は現在、どのような業務にあたっていらっしゃるのでしょうか。
有光様:主な業務は観光促進で、室戸市内でイベントや周遊企画を実施しています。室戸市は豊かな自然が守られている反面、交通面では不便なところもあるため、訪れてもらうための工夫が必要です。室戸市までは「DMV(デュアル・モード・ビークル)」という、汽車とバスが一緒になった乗り物が通っているのですが、この乗り物を使って室戸に訪れ宿泊してもらうことで、クーポンをプレゼントする企画なども考えています。
浦:今回、ARスタンプラリー実施に至った経緯についてお聞かせいただけますか?
有光様:室戸市で過去に実施してきたスタンプラリーは、すべて紙ベースでした。そのため、企画実施にはチラシ・ポスター・台紙・スタンプを作成して店舗へ配布する必要があり、また企画が延長になった場合にはそれらを作り直さなければならなく、コストも手間もかかっていました。この課題を解決したいと考えたとき、まずはじめに出てきたアイデアが、デジタルスタンプラリーでした。
浦:紙のスタンプラリーを実施していたときは、何名くらいでご対応されていたのですか?
有光様:企画担当は3人体制ですが、スタンプラリーをクリアした方へ景品受け渡しなどをする窓口に2人、チラシやスタンプ台の発行数管理に1人、データ管理に1人、あとは広報活動に1人。多くの作業量があったため、分担して行う必要がありました。
浦:たしかに数名体制で、市全体の店舗数のやり取りが発生すると考えると、手間も時間もかかりますね。紙でのスタンプラリー自体は、どのくらい開催されていたのですか。
有光様:大規模なスタンプラリーは、5年間です。飲食店・宿泊施設・観光施設・体験施設など、市内のほぼすべてのお店が入ってるような企画は、延長を重ねて5年継続してやってきました。
その期間には、ほかのスタンプラリーも並行して開催しており、たとえばぬいぐるみのくじの施設を回る「くじラリー」というスタンプラリーや、観光施設を回って500円以上使うと割引券がもらえるという企画も、委託先と協力して取り組んできました。
浦:今回のARスタンプラリーは、有光様から「やってみたい」とご提案されたのでしょうか?
有光様:提案者は私とは別の担当者ですが、予算をつけるときにクラウドサーカスのサポート担当の方からARの提案を受けて、とても面白そうだと感じ、室戸市でもARに取り組んでみることにしました。
浦:スタンプラリーをARでやることについて、市役所での反応はいかがでしたか?
有光様:そうですね…今までやったことのない企画である上、高知県内でもそういう事例が全然なかったため、「面白そう!」という声よりは、心配する声の方が多かったですね。
浦:そうですよね、感覚的に「まず何をすればいいの?」と思われる方も多いかもしれないですね。
渡邉:そもそもデジタル施策を取り入れることへの反応はいかがでしたか。
有光様:室戸市の観光においては、デジタル化が進んでいないというのも一つの課題でした。たとえば観光パンフレットや案内マップは紙ベースのものが多く、データの分析というところまではなかなか至っていないんです。
ただデジタル分野を活用していきたいけど、使い方がわからないだけという側面もあり、スタンプラリーをデジタル化したいという案に対しては、前向きな反応も一定数ありました。上司の方の中では「仕組みが複雑そうだけど大丈夫なの」といった反応もありましたが。
渡邉:市議会の議員様、あるいは市長様にお話を持っていったときの反応でいうといかがでしょうか。
有光様:今までやったことのない、新しい企画だったので、そこはすんなり「いいよ、やってごらん」といった反応だったと思います。
浦:今回、プロポーザル方式でクラウドサーカスをご選定いただいたのですね。
有光様:プロポーザル方式では審査員の方が採点をして、その場で一番得点が高かったクラウドサーカスさんに決定しました。
私たちは得点しか確認できないので、他と比べてどこが良かったかなど、詳細ははっきりわからないのですが。審査員の方からは「イルカをコンセプトにしていて、室戸らしさがあってよかった」という声や、あとはターゲットを20〜30代の女性に設定してたので、「若者に受けそうな企画だね」という声が上がっていました。
渡邉:全体では何社くらいの応募があったのでしょうか?
有光様:全部で5社ですね。室戸市が声をかけさせていただいたのはクラウドサーカスさんの1社で、ほかの業者の方はホームページなどの情報を見て提案してきてくださいました。
浦:ありがとうございます。弊社の企画を最初にご覧になったとき、印象に残った点や良いなと思った点などはございますか。
有光様:「いちばん見ていてワクワクする企画だな」と感じたのと、「具体的にどういうことをするのか一番わかりやすかった」のがクラウドサーカスさんの企画内容でした。おそらくそこも得点に繋がっていたのではないかと思います。
ARスタンプラリー×チャットボット企画「イルカと室戸と私」は、市内に設置されたARスポットを回ってARスタンプを5つ集めて応募すると、スペシャルグッズが当たる企画。
QRコードを読み込むとチャットボットが起動し、室戸市をイメージしたイルカのキャラクターが現れる。イルカに質問されたことに答えていく形でスタンプラリーを進められるため、ストーリー性のあるワクワクの体験が可能。「会話」という形式を用いることで参加者にインタラクティブな体験を提供し、スタンプラリーの体験価値を向上させる。
ARスポットに設定された場所でQRコードを読み込むと、ARスタンプをゲットできる。また同時にARフォトフレームも体験でき、これを使って撮影した写真をSNSに投稿することで、当選確率が2倍になるハッシュタグキャンペーンも同時開催。出かけた先でフォトフレームを提供することで参加者は特別な思い出づくりができるため満足度も向上、楽しく周遊を促しながら、SNSキャンペーンも併用することで認知拡大効果も。
浦:今回ARスタンプラリーを企画するにあたって、何か大変だったこと、特にこだわったことなどございますか。
有光様:大変だった点に関しては、今回デジタル化したことで本当に手間がかからなくなったので、逆にないくらいなんです。
こだわった点は、賞品の選定です。今まで実施してきたスタンプラリーの景品はありきたりなものが多くて、「室戸市で使えるクーポン何円分」「特産品◯点セット」というものが多かったです。今回のスタンプラリーでは、室戸らしさを感じるレアな賞品として、
を用意しました。B賞は地元の方がすべて手作りで作られているストラップで、室戸でもあまり見かけないめずらしいものです。このあたりは、こだわった部分かと思います。
浦:ARスタンプラリーを実施するにあたって、役所内で不安なお声があったというお話も聞きました。有光様自身は、実施する上で不安だった点などはございますか。
有光様:市役所の職員はデジタルに疎い人も多く、たとえばZoom会議しますと言っても接続方法すらわからないという方もいますし、観光に来られる方も年配の方が多い傾向があります。
そのためスマホを使いこなしてチャットボットで会話して、何かをゲットするというステップは、すこし難しそうだなとも感じていました。「本当に参加してくれる人がいるかな」という不安は少しありましたね。
浦:実際に完成したものを市役所の方々に触っていただいたと思いますが、そのときの反応はどういった感じでしたか。
有光様:実際完成したものに対しては、「どうやるんだろう」「これ、何か出てきたね」とすごく楽しんで操作してくれていました。
浦:新鮮な仕掛けに驚いていただいた、という印象でしょうか。
有光様:そうですね。
浦:ARスタンプラリーを実施してみて、「こういったところが良かった」「新しい発見があった」といった成果があれば教えてください。
有光様:そうですね、一番大きな成果だと思ったのは、今まで調査しきれなかった情報を、データ一覧でぱっと見れるようになったことです。
今まではわかるのは参加された方の居住地だけで、男性なのか女性なのか何十代なのかまったく把握しきれないまま、とにかく実施するというスタイルでした。
そのため参加された方のニーズなども把握できていなかったのですが、比較すると今回のARスタンプラリーは、データを次回にも活かせる点でも、効果がすごく大きいなと感じますね。
浦:紙ベースのスタンプラリーでは、個人情報を取得しにくい点も課題だったのですね。
有光様:チャットボットなら、スタンプボタンで年代を選んでもらって、出身地も選んでもらって、と自然な流れで入力してもらい進められたのがよかったですね。
浦:なるほど。今回は、男性の参加者が多く、意外な結果になったそうですね。
有光様:そうなんですよ、所感で「スタンプラリーって、男の人はあまり興味がないのではないか」と考えていて、今回のターゲット層も若めの女性で絞っていました。
しかし実際は、想像以上に男性の参加者が多くて、幅広い層にニーズがあるんだなと気づきがあったので、次年度の企画などに活かしていきたいですね。
浦:全体の割合だとどういった方々が一番多かったのでしょうか?
有光様:満遍なくちょうど男女が半々くらい、年代的にもそんなに偏りはなく、幅広い年齢層の方に楽しんでいただきました。
浦:参加者の属性としては、ご家族なのか、パートナーやお友達と、それとも1人で参加される方が多いのか、そういったデータは取得されていましたか?
有光様:スタンプラリーを達成した時間などを確認すると、1人よりかは2人などまとまったデータが見えてきたので、おそらく夫婦やカップルなどで一緒に楽しんでいただく機会が多かったんじゃないかと思います。
渡邉:今回スタンプをいくつかの場所に設置したと思いますが、スタンプラリーに参加された方がそのお店で何か購入したなど、地域にお金を落とすような動きに繋がったケースやお声などは、お店側からは聞かれましたか。
有光様:自分もよく行く飲食店さんも対象店舗に入ってもらっていて、いわゆるファミリーで来られるような飲食店なのですが、そのお店からARスタンプラリーをスタートされる方は多かったようです。
お店のポスターのQRコードをスマホでかざして「次はどこへ行こう」と、まさにスタート地点になっていたらしく、「周遊促進に繋がってよかった」といった声はありました。
渡邉:ありがとうございます。そこでお食事された方が、現地でスタンプラリーを知って、「ちょっと体験してみたい」「まわってみようか」といった流れですね。
有光様:そうですね、その店舗を起点にほかの観光施設や自然スポットに行ってくれる人が多かったようです。
浦:今回の企画に協力いただいた施設や飲食店は、ARスタンプラリーを提案したときの反応はどのような感じだったのでしょうか?
有光様:おそらく、対象店舗側の手間もすごく少なかったので、そこが一番喜ばれた点でしたね。
今までは、チラシを配って、ポスター貼ってもらって、スタンプ台を配って、スタンプを押して…。という流れをそれぞれの店舗でやってもらう必要があったのが、ARスタンプラリーではポスター1枚貼ったら完結する手軽さです。企画をやって欲しい、という声はちらほら聞きますね。
浦:忙しい時間帯にお店の方に「スタンプ押してください」と対応していただくのは、なかなかむずかしいですよね。
有光様:そうなんです。とくにスタンプラリーはひとつではなく、高知県全体でのスタンプラリーなど、種類がいくつもあって。この企画はこのスタンプで、この企画はこのスタンプで…、とごちゃごちゃしていたのが解消されたようです。
浦:たしかに複数のスタンプラリーが同時期に実施されていたら、店舗としても混乱しますし非常に手間が増えますね。
有光様:今回のARスタンプラリーは、逆にすることがないくらい、ポスターを貼っておくだけというのが本当に楽だったようで、そこはすごくいい評価をもらっています。
浦:今回のARスタンプラリーは、運営側としても紙スタンプラリーと比べて工数は変わりましたか?
有光様:今回ARスタンプラリーをやってみて、逆に「することがない」くらい、本当にこれでスタンプラリー実施できるのかな?と思ってしまうくらい、手間がありませんでした。
紙スタンプラリーのときは、毎朝どれくらい達成者がいたか、何部追加発行する必要があるか、と確認する作業を、毎日毎日Excelに手入力して行っていました。ARスタンプラリーでは、そういったデータもすべてツールが自動集計してくれるので、そこは本当に楽に・便利になった部分ですね。
浦:ありがとうございます。スタンプラリー企画終了後は飲食店の方に、実際どうだったかヒアリングをされる予定はございますか。
有光様:来年度実施するスタンプラリー企画に向けても、対象施設側の声を集めていきたいため、アンケート形式で満足度などを記入してもらおうかなと思っています。
浦:スタンプラリーを個人で体験された方に対してはアンケートなどは取られたのですか?
有光様:周りの職員の方には、参加してもらって感想を聞きました。場所や、スマホの機種によっては「操作しづらい」「ちゃんと会話が返ってこない」といった声も一部であったようですが、基本的には楽しかった!という声が多いですね。
浦:このスタンプラリー自体は観光客の方向けだとは思いますが、室戸市にお住まいの地元の方に対しては、何か告知・PRはされたのですか?
有光様:はい、毎月配ってる広報に掲載をして、市民向けにも情報発信をしました。
浦:観光客の方にたくさん訪れてもらって地域にお金をお金を落としていただくのと同じくらい、地域活性の部分もこのスタンプラリー企画を通して副次的に実現できたらいいですよね。
渡邉:観光施策となると、移住者や町おこしに携わる人は積極的に受け入れてくれる一方で、住民の方からはどのような反応があるのでしょうか。
有光様:そうですね、今回のAR企画もまさに新しいもの、かつ若者向けだったので、さまざまなお声があったようです。
ただ「新しいものを取り入れて若者を呼ぼう」と前向きな人たちも多く、そういった方たちが「室戸をさらに良くしていこう」と協力して情報発信してくれたこともあり、今回の企画では室戸市に新しい風を吹かせられたのではないかと思っています。
渡邉:なるほど。市役所の方だけでなく、市民の方や飲食店の方たちも協力的な方が何名もいらっしゃったのですね。
有光様:区内に何名かいる「地域おこし協力隊」の方たちや、移住してきた方は、新しいことを取り入れてどんどん室戸市を良くしたいという思いで活動されています。そういった方たちが最前線で情報発信してくれたり参加してくれたりしました。
やっぱり「やったことないことをやってみたい」「挑戦したい」という熱が強くて、自分たちも頑張らないと!と感じさせられますね。
渡邉:そういう動きは地域を変える力になりますよね。
浦:今回の企画を、クラウドサーカスに任せてよかったなと思うところや、ご満足度。逆にもっと改善してほしいな、と思うところがあればお聞かせください。
有光様:取り組む前は、1つシステムを構築しても、少しの幅でしか使えないイメージでした。しかし今回のARスタンプラリーは、チャットボット「IZANAI」とウェブARツール「LESSAR」、異なるツールを組み合わせた企画です。これらのツールは、今の企画以外にも自分たちでどんどん新しく開発できるため、企画の自由度も高くなると感じます。
実際やってみて、スタイルが新しいというだけでなく、シンプルにやりやすいというのが一番でした。担当としては来年もこういった形でできたらいいなと思っています。
浦:今回の企画は、企画から実施まで、弊社の対応も含めて、100点満点のうち現時点で何点くらいだと感じられていますか。
有光様:100点満点に近いですね。サポート担当の方も、使い方を本当にひとつずつ丁寧に説明してくれました。
今の企画のほかにも、「IZANAI」でモデルコースを紹介するチャットボットを1から作っていて、最近ようやく完成しました。こちらはサポート担当の方にはそれこそ10回以上ご連絡して、毎週のように教えていただきました。
LESSARもわからなくて連絡をしたらすぐにzoomをつないでくれて、全部丁寧に教えてくださって。逆に申し訳ないくらい…すごく頼りになり頼もしいです、ありがとうございます。
浦:こちらこそご活用いただきありがとうございます。IZANAIとLESSARのサポート担当からもいろいろお伝えしているとは思いますが、実際に初めてツールを触ってみた正直な感想があればお聞かせいただけたらなと思います。
有光様:初めて操作したときは、工数も多くて大変だなと感じたのが正直な感想です。ただ画面横に、質問できるチャットボットのようなものがあり、ほとんどのわからないことはそこで調べたら解決できる仕組みになっていました。操作方法もまとめられているので、何とか1人でもやれないことはないな、という操作感だったと思います。
浦:今実施されている企画が今月終了した後に、IZNAIやLESSARを使ってみてやってみたいことなどがあればお聞かせください。
有光様:現在室戸市ホームページでは、モデルコースの案内をチャットボットで行っているのですが、これが評判がよくて、案内所などでも使ってもらうようにしています。今までガイドブックでしか見られなかった情報がスマホで気軽に見られるようになり、市内のさらなる周遊促進につながっています。
これまでスタンプラリーのような企画は「やって終わり」で、あまり次に繋がることが少なかったと感じています。今後は、もっと市内のいろんな施設を巻き込んで、市役所の組織内だけでなく、多くの団体の方も巻き込んで、かつ、店舗が求める声も拾いながらデジタル促進していけたらいいなと思っています。
具体的にはまだ「こういうのがやりたい」というアイデアは思い浮かんでないので、またこれからいろいろ考えないといけないな、という感じです。
浦:ありがとうございます。AR×チャットボットという事例自体、国内にはそんなに多くないため、もしかすると今後、室戸市が初となる事例が創出できるかもしれないですね。
今回はインタビューのご協力ありがとうございました!